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会田誠『「色ざんげ」が書けなくて(その二&その三)』

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「オナニーとはセックスの前段階にある代替品ではなく、独立した価値を持つ人生の目的そのもの」と言う、天才美術家・会田誠が考える「性」のあれこれ。

「オナニー」については愛溢れる言葉を尽くし、「セックス」については、おそるおそる言葉を選ぶ。 それは、「あんなクレイジーなこと赤の他人とできるわけない」と考えていたハイティーンの頃の気持ちが抜けきれないから――。

オナニー方法と妄想の遍歴、セックスに対していまなお抱く違和感、そして会田作品における性の意味まで赤裸々に開陳。

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「色ざんげ」が書けなくて(その二)

 オナニーという言葉はなんといってもその語感、つまり音が素晴らしいんです。なんとなく女性的な柔らかい響きがするではありませんか。

 ドイツ語の「オナニー」は、旧約聖書の神話に登場する若い男「オナン」が語源だそうです。セックスの時わざと膣外で射精したため、神々の怒りを買った若者。彼の名は「おんな」の並び替え=アナグラムなんですよね(昔の不良言葉に“ナオン”というものもありましたっけ……本題と関係ありませんが)。もちろんドイツ語(ラテン語)─日本語限定の偶然の一致に過ぎないことは分かっています。しかしそれだけで済ますのはあまりに惜しいと感じられ、つい「洋の東西を超えて響き合う言霊」なんてものを僕は夢想してしまいます。

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