会田誠『「色ざんげ」が書けなくて(その八&その九)』
「オナニーとはセックスの前段階にある代替品ではなく、独立した価値を持つ人生の目的そのもの」と言う、天才美術家・会田誠が考える「性」のあれこれ。
「オナニー」については愛溢れる言葉を尽くし、「セックス」については、おそるおそる言葉を選ぶ。 それは、「あんなクレイジーなこと赤の他人とできるわけない」と考えていたハイティーンの頃の気持ちが抜けきれないから――。
オナニー方法と妄想の遍歴、セックスに対していまなお抱く違和感、そして会田作品における性の意味まで赤裸々に開陳。
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「色ざんげ」が書けなくて(その八)
そのようにポルノから心身共に多大な恩恵を蒙(こうむ)ってきた僕は、いわば「ポルノに足を向けて寝られない男」なわけです。ところがこの世はなかなかヤヤコシクできていて──。
森美術館における僕の個展の途中でこんなことがありました。フェミニスト団体から来た抗議に対して、森美術館側が出した公式コメントの中に「会田の展覧会はけして低俗なポルノではなく、真面目な芸術なのです(だいたいの意訳)」といった文言がありました。一般的に考えれば特に穿うがっているわけでも間違っているわけでもない、こういう場合に常用される妥当な言い回しかもしれませんが、僕個人は少々困ったことになりました。
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