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橋本治のかけこみ人生相談 親子・夫婦編

顔見知りにはなかなか言えない深い悩みに、人生の達人・橋本治がズバリお答え。

相談者も気づいていない煩悶の大モトと、その解決法が見えたとき、新境地へ踏み出す勇気が湧いてくる!

壁にぶつかる人生も、たまには悪くないのかも。

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目次

◆「母親に逆らわず育ちました。年に一度でも実家に帰省するのが憂鬱です」
 回答「『お母さんが嫌いだから私は帰らない!』と電話でぶちまけるべき」

◆「母の再婚相手をどうしても受け入れられません」
 回答「あなたの悩み方は“子離れできない親”と似ています」

◆「頑固な娘が心配。理詰めで親を責め立て、聞く耳を持ちません」
 回答「ひとりごとをご活用ください」

◆「脳梗塞で倒れた父。麻痺が残り時々ピントがずれたことを言います。意気消沈する父を元気づけたいのですが」
 回答「元のお父さんになるよう頑張って、は逆効果」

◆「勉強が嫌いです。両親の言う“いい大学”に行きたいとも思いません」
 回答「ご両親が行けという“いい大学”に合格すべき。それがご両親の言いなりから自由になる一歩です」

◆「酒癖のひどい夫。別れた方がいいでしょうか」
 回答「依存症では。彼自身が“自分は病気かも”と素直に思える救いの手を、まず」

◆「疲れるのです。自負心の強い夫と一緒に暮らすのが」
 回答「ご主人に、『あなたと違う質の人間がいる』ことを伝えた方がよろしいのでは」


◆「母親に逆らわず育ちました。年に一度でも実家に帰省するのが憂鬱です」
 回答「『お母さんが嫌いだから私は帰らない!』と電話でぶちまけるべき」

◎とさか さん(主婦・40歳・女性・青森県)からのご相談

 実母のことで相談します。私は子どもの頃から、母親に逆らわずに育ちました。進学も就職先も言われるがままです。帰りが遅くて気に入らないという理由で、気に入っていた勤め先をやめさせられ、親の見つけてきた会社に転職させられたりもしました。

 私は結婚して現在は遠方に暮らしています。帰省するのは年に1~2回がやっとです。JRで5時間ほどかかる距離です。主人はとても優しい人でおおらかな性格です。安定した職業にもついてます。私が唯一自分で決めたのは結婚相手だけです。実家にいたときは母親の顔色を伺いながら生活していましたので、毎日はとても快適です。

 母親は主人のことを気に入らないようで(実家から遠方に就職したから)罵ば詈り雑ぞう言ごんを浴びせます。私も実家から逃げたと思われたのか、母方の祖父が亡くなった時、産後で帰省中だったのですが「お前が変わりに死ねばよかった」と何度も言われ続け、ウツっぽくなってしまいました(今思えばさっさと帰ればよかったです)。父親は主人を気に入っているのですが、母の報復が怖いのか庇かばってくれません。

 実家には35歳独身の弟がいますが、200万ほどの遊興費の借金を即、肩代わりしたりして、両親は可愛いようです。

 私も言うことさえ聞いていれば、愛情をもらえましたし学校も行かせてくれました。そのことには感謝しています。でももうこんな実家に帰省するのは年に一度でも憂鬱なのです。最近は帰省することを考えるだけでも気分がふさぎ、毎日鬱々としています。

 今年のお盆には私の子どもたちだけで実家に行かせました。孫は可愛いようです。その際、なぜお母さんは来ないのと聞かれたみたいです。母親の時折見せる悲しそうな顔を思い出すと、本当は私だけでも子どもたちと帰省して顔を見せたほうが良いのかなとも思います。でも、実際帰省すると主人の悪口ばかりで気が滅入ります。意見すると逆切れします。でも、もう主人への悪口は聞きたくありません。

 それでも年に数回のことだから我慢して行った方が良いのでしょうか? 両親から言うと、遠くに住む私たちは親不孝だといいます。


◎お答えします

 お悩みのこととお察しします。どうすればいいのかと言うと、お子さん達だけを行かせて、あなたは実家へ帰らなければいいのです。お子さん達を行かせる前に、電話を入れて「私は行きたくない」とはっきりお母さんにおっしゃるべきです。

 そうすると「なぜ?」という問いが向こうから返って来ます。「お母さんが嫌いだから私は帰りたくない」とおっしゃるべきです。そうするとまた「なぜ? なに言ってるのよ!」という声が返って来ますから、「だってお母さん、私の彼が嫌いでしょ。私のことを幸福にしてくれる人の悪口を聞かされて嬉しいわけなんかないんだから、帰らない!」とおっしゃればいいのです。そうすればお母さんは本格的に騒ぎ出して、「なに言ってるのよ!」から始まるわけの分からない話をし始めようとしますから、そうなる前にすかさず、あなたが思いつく限りの「いやな記憶」をぶちまけるのです。

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